当寺は、青葉山頂の東に位置し、海抜約100mの高さにあり、真言宗御室派、青葉山中山寺と申します。青葉山の西側には、西国29番札所の松尾寺もあり、境内からよく晴れた日には白山を望むことができます。
このお寺の開創は、奈良時代、平城天皇の時代、大同2年(西暦807)今から1200年くらい前に、白山を開かれた越の大徳泰澄大師が中山寺として創建されたお寺で、本尊に釈迦・阿弥陀・観音の三尊を安置していたと享保3年(1530)の「本堂修復勧進帳」に記されております。今の本堂は、鎌倉時代の初め、天台僧の覚阿法印が寺名を一乗寺と改め、馬頭観音坐像(重要文化財)を本尊として再興を図って建てられたものであります。その一乗寺がいまの中山寺と改められたのは、室町時代になってからのことでございます。
本堂は、桁行き・梁間とも五間で入母屋造りの桧皮葺きの建物で、内部を内陣・外陣・脇陣に分けた密教系本堂の構成をみせる高浜町内唯一の国指定重要文化財の建造物で、小屋組みの墨書銘から康永2年(1343)鎌倉時代後期に建てられたことが判明しております。また本尊を安置する厨子も、永禄4年(1561)の修理に際して、時の領主によって寄進されたもので、本堂と同じく重要文化財に指定されています。本堂の構造は、和様を基調とし、長押を用いて軸部を固め、三斗組で二軒繁垂木の軒を支え、中備えは間斗束で、柱間の装置は、正面中央三間を蔀戸とし、両脇を連子窓としています。両側面は前から桟唐戸、引き違い格子戸を入れ、背面は中央間に板引き違い戸を入れ、ほかは板壁です。細工は、内陣に花肘木を多用する点や、木鼻等の繰り形から、鎌倉時代の特徴をみることができると評されています。昭和40年に解体修理が行われ、平成20年に屋根桧皮の葺き替えを行いました。
ご本尊馬頭観音座像は、三面八臂の馬頭観音の座像で、像高79.3㎝の桧材の寄木造りで、鎌倉時代中期の作で重要文化財であります。宝髻、焔髪を表わした頭上に馬の上半身を載せ、両脇面は天冠台上に如来像を載せ、面相は牙を剥いた忿怒相で三眼を表わし、胸正面で真手合掌し、第二、第四指を屈して馬口印を結んでいます。右膝を少し高く上げて踵を左足裏にあて、瑟々座上の蓮華座に座す。この台座及び円光背は、像造当初のもので大変貴重なものであります。この像の作者は、その寄せ木法が運慶およびその奈良系統の仏師の彫成像に良くみられる特色をもっていることから、湛慶が彫ったものと言われています。このご本尊の馬頭観音様は秘仏で、ご開帳は33年目と、その中間に当たる17年目となっており、次のご開帳は2028年の予定で、海上交通の安全の守り本尊として古くからその信仰を集めて参りました。
仁王門に安置される金剛力士像二体は、阿形が像高282cm、吽形が267.2cmを計測する。阿形は腰を右に捻って立ち、両臂を左右に強く張って腰脇に持物を執る。吽形は腰を左に捻って、左手を臂も手首も側方に張り出して五指を開き、右手は拳を作って顔前にかざす、大変珍しい構えを見せている。肉付き豊かな表現は、奈良東大寺の仁王像と同系のものといわれ、これも本尊同様、鎌倉時代中期の湛慶が彫ったものと言われ重要文化財に指定されています。この仁王様は、平成3年にロンドンの大英博物館で一般公開され、西欧の人々の賞賛の的となった仁王様でございます。
ご本尊の両脇にお祀りされております仏様は、向かって右が不動明王、左が毘沙門天で、いずれも鎌倉時代中期の作で、本尊と同様に慶派仏師の作になる高浜町の指定文化財であります。このように、中央に観音、両脇に不動明王・毘沙門天を祀る形式は、天台密教寺院に多く、この寺も再建時には天台宗であったようでございます。
このように中山寺から眼下に眺められる狭い土地柄なかにあって、五間四面の本堂や当代一流の仏師による本尊馬頭観音像や仁王像が造立されたのは、とりもなおさず当時大陸と若狭の交易の産物の賜物であり、また、そこに住む人々の信仰心の大きさを想像させてくれるものであります。
なお、隣の持仏堂には、平安時代後期に製作され、福井県の指定文化財となっております阿弥陀如来坐像をお祀りしております。
また、昭和58年(1983)に、いまの天皇陛下がご休息遊ばされましたお部屋が、当時のままにしてあり、その部屋の欄間には、中国の大革命家「孫文」と大文学者「魯迅」の直筆の書が、床の間には各種仏画を架けており、また、日展の画伯崎山木芳先生の襖絵が5つの各部屋を極彩色で飾っております。また境内には、裏千家千玄室大宗匠に「望洋庵」と命名されました立礼式の茶室もあります。のちほどごゆっくりご鑑賞下されば幸甚でございます。
本堂
方丈(持仏堂)
山門(金剛力士像)
馬頭観音菩薩像
馬頭観音菩薩は、三十三体にも身を変化して衆生済度をなさる御誓願をもっておられますが、中でも馬頭観音さまは、慈悲の御心が最も深く、しかし表に表れたお姿は、この写真のように三面八臂忿怒のお顔、頭上に馬頭を載いておられます。御持物のすべてを以て、人間の持つ悪業障を砕き、また災難を除くと言う御誓願、信仰する人はその加持力により、あきらかにお蔭を受けることができます。
※馬頭観音菩薩は秘仏であるため通常は非公開となっております。ご開帳は33年目と、その中間に当たる17年目となっており、次のご開帳は2028年に開催される予定です。
金剛力士像(阿形)
金剛力士像(吽形)
両界種子曼荼羅
阿弥陀如来座像
毘沙門天立像
不動明王立像
白寿観音像
襖絵(崎山木芳画)
本堂で結婚式を開催することもできます。
墓地は、若狭湾が一望のもとに眺められる境内の一画にあり、管理の行き届いた霊園です。広く住民の方々にご利用いただいております。
墓地区画(永代使用料) | 20万円 |
年管理料 | 2,000円 |